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今日のブログでは、ハラスメントの相談窓口担当者が、
●相談者(被害者)
●ハラスメント行為者
●第三者に対して、
どのような事に心がけて話を聴いたらいいのか、ポイントを19個紹介していきます。
●ハラスメントの相談窓口を設置しているけど、有効に機能していない
●被害者が、社内窓口ではなく、「弁護士」や「労働局」等の外部に相談してしまう
●相談窓口担当者に任命されたけど、対応に自信がない
そんなお悩みを持った方の一助になれば幸いです。
相談窓口担当者の心構え
(1)話しやすい雰囲気をつくる【信頼関係の構築がポイント!】
相談窓口担当者として、一番やってはいけない事は、「事務的な対応」です。
自分の辛い想いを分かって貰えず、事務的に処理されたら、
相談者はどう思うでしょうか。
「この担当者は、私のことを何も分かってくれない!」
「こんな人に、相談しても意味が無い」と失望するでしょう。
場合によっては、社内の相談窓口に見切りをつけ、
●「弁護士」や「労働局」等の外部機関に相談する
●マスコミに訴える
そんなケースも出てくるかもしれません。
そうならない為にも、
●相談者の気持ちに寄り添い、相談者が話しやすい雰囲気をつくる。
●「この人になら、安心して話ができる」と相談者に思って貰うことが大切です。
相談者が話しやすい環境をつくる為には、下記を心がけましょう。
【相談者が話しやすい環境を作る 傾聴のポイント】
●内容の確認を急ぐあまり、話をせかすような事はしない。
●心情に配慮しながら、相談者の話を丁寧に聴いていく。
●メモを取ることで、「聴いて貰っている」という安心感を与える。
●声のトーンを合わせる。(辛い話のときには、声のトーンを下げる)
●相槌を打つ。
●相手の話したくないことは、無理に聞き出さない。
(「話したくなければ、無理に話さなくても大丈夫ですよ」と声を掛けましょう)
●沈黙が続いても、すぐに質問せず、待つ。
(「重要なこと」・「本音」を話す前に、沈黙になるケースがあります)
etc・・・
(2)「決めつけ」や「偏見」、自分の「価値観」・「意見」の押し付けをしない
相談窓口担当者は、中立的な立場で、相手の話を丁寧に聴き、
事実を正確に把握することが大切です。
「決めつけ」や「偏見」、
「自分の価値観」・「意見」を押し付けないようにしましょう。
たとえ相手の為だったとしても、
「アドバイス」や「必要以上に励ます」ことも、適切ではありません。
安易な発言は、相談者に「この人は私のことを何も理解していない」と感じさせ、
窓口担当者への不信感に繋がります。
下記のような発言は、しないようにしましょう。
【相談窓口担当者のNG発言】
■《相談者にも問題があるかのような発言》
●あなたにも、隙があったのではないですか
●あなたの行動に、問題があったのではないですか
●あなたの考えすぎ(過剰反応)ではないですか
■《担当者の意見を押し付けるような発言》
●大ごとにしたら、会社に居づらくなりますよ
●加害者(ハラスメント行為者)は悪い人ではないから、問題にしない方がいいですよ
●そんなことで、くよくよしない方がいいですよ
●個人的な問題だから、相手と二人でじっくり話し合えばいいんですよ
●そんなことは、無視すればいいんですよ
●気にしても仕方ない。忘れて仕事を頑張りましょう
●時間が解決してくれますよ
●そのくらいのことは、我慢した方がいいですよ
■《不用意な慰め》
●あなたが魅力的だから、ついそのような事をしてしまったのではないですか
●あなたが優秀だから、期待するあまり言ったんじゃないですか
■《行為者を一般化するような発言》
●男性(女性、上司)は、皆そんなもんだ
事前説明
相談を受ける前に、下記について、
相談者に事前に説明をし、同意を得るようにしましょう。
(1)守秘義務の説明
●相談内容が、外部に漏れる事はない(守秘義務の徹底)
●相談者のプライバシーを守る
●相談をすることで、相談者が不利益を被ることはない
●第三者に相談内容を伝える場合は、
「誰に、どんな情報を、どのような目的で伝えるのか」を説明し、
相談者の同意を得た上でおこなう
(2)複数名で相談に応じていくこと
●原則「2名」の相談員で対応していきます。
*適切かつ公平な対応をする為には、「男女2名」の相談員で対応することが理想です。
●相談者の希望により、相談員が一人で話を聴く場合には、
他の相談員とも連携を図る場合がある旨を伝える。
●相談者が精神的に不安定になっていたり、体調を崩している場合には、
産業医や医療機関とも連携し、支援をおこなう場合もあると伝える。
(3)相談の内容を記録に残すこと
●相談内容を記録に残すことを説明し、相談者の同意を得ましょう。
●面談の内容は、忘れないようその日のうちに記録します。
●面談記録の「保管場所」や「保管期間」についても、相談者に伝えましょう。
(4)1回の相談時間は、長くても1時間
人の集中力が持続するのは、「1時間」程度です。
1回の相談は、長くても1時間としましょう。
では、皆さんに質問です。
相談者が、1時間を超えたにも関わらず、
「もっと話を聴いてほしい」と訴えてきたら、皆さんだったらどうしますか。
対応として正しいのは、次のうちどちらでしょうか。
【A】次の相談日を設定して、切り上げる。
【B】相談者の要望に応えて、その場で「延長」して面談をおこなう。
対応として正しいのは、【A】です。
言われるがままに相談時間を延長すると、
集中力が途切れるだけではなく、相談者の精神的疲労に繋がる恐れがあります。
話し切れなかったぶんは、次回にまわす。
1回の相談時間を長くするのではなく、相談回数を増やすようにしましょう。
被害者へのヒアリング
ハラスメントを受けた被害者の方から、話を聴く際には、下記の8点に留意しましょう。
(1)「困っている事」や「要望」を確認する
●いつ、どこで
●誰との間で
●どういうことが起こっていて
●相談者はどのように感じているのか
●相談者が、望む事は何か
を正確に把握します。
ここでポイントになるのは、3つです。
①暴言の内容を確認する
暴言は、
●「死んでしまえ!」
●「会社を辞めろ!」など、
内容によっては、たった1回の暴言でも、問題となる場合があります。
被害者が、ハラスメント行為者(加害者)から、
具体的に何を言われたのか、
前後のやりとりも含め、確認していく事が大切です。
②感情に寄り添う
被害者が、「ハラスメントを受けてどのように感じたのか」を
丁寧に聴いていきましょう。
このとき、
●「ほんとうに辛い思いをしたんですね」
●「その苦しみを今まで一人で抱えてこられたのですね」
などの声掛けをし、相談者の苦悩を受け止めてあげることが大切です。
③「目撃者」や「証拠」があるか確認する
「ハラスメントの被害を受けた証拠」があるかを確認しましょう。
●メール
●チャット(LINEなど)
●録音
●日記
●相談した者の有無
等が証拠となり得ます。
(2)体調を確認する
ハラスメントは、精神的な苦痛から、体調を崩す場合があります。
●眠れていますか
●食べれていますか
●体調はいかがですか
などの質問をし、相談者の体調を確認するようにしましょう。
「眠れない」等の心身の不調がある場合は、
「医療機関を受診しているか」を尋ねましょう。
受診をしていない場合は、産業医や医療機関への受診を促します。
また、心身の不調については、相談者の同意を得た上で、
窓口担当者だけではなく、「産業医」や「人事部」、「労務部門」等と
連携して進めていくことが大切です。
相談者が心身の不調を訴えている場合には、
●体調の回復を優先させる
●対応を急ぐ
ようにしましょう。
厚生労働省の調べによると、平成28年度のハラスメントを理由とした自殺・自殺未遂は、
22件も起こっています。
対応が長期化することで、被害者の精神的な苦痛が増え、
最悪の場合、ハラスメントを原因とした自殺を引き起こす恐れがあります。
被害者を守る為にも、「早期解決」が重要です。
(3)過重労働の有無を確認する
「ハラスメント」と「過重労働」が重なると、
うつ病や休職、過労死、自殺のリスクが高まります。
被害者の命・健康を守るためにも
●残業時間
●休日出勤の有無
●上司が、過重労働を強制・容認・放置していないか
を確認するようにしましょう。
過重労働を放置していると、会社も法的な処分を受けるので、
早急な解決が必要です。
(4)確認しながら聴く
相談窓口担当者は、相談者の「辛い気持ち」に寄り添いながら、
「事実」を正確に把握することが大切です。
●「……なのですね」
●「……という意味ですね」
●「……で……なのですね」
など話の内容を確認しながら、丁寧に聴いていきましょう。
確認を怠ると、「相談者が何に困り・何を望んでいるのか」を
正しく把握することができません。
(5)相談者を責めない
ハラスメントの行為者(=加害者)が、
●地位の高い人
●仕事で実績を残し、会社に貢献している人だと、
相談窓口担当者が、ハラスメントの行為者を擁護するような発言を
してしまう場合があります。
【ハラスメント行為者を擁護するような窓口担当者の発言】
●あなたの行動にも、問題(落ち度)があったのではないですか
●あなたが優秀だから、期待するあまり言ったんじゃないですか
●それは、あなたの考え過ぎではないですか。
また、なかにはハラスメントの行為者を擁護しようと、
「相談者を責めるような発言」をしてしまう場合もあります。
【相談者を責めるような窓口担当者の発言】
●なぜ、こんな状態になるまで放っていたのですか
●どうして『嫌だ』と拒否しなかったのですか
相談者は、誰にも相談ができず、心も身体も疲弊した状態で、
相談に来ているケースが多いです。
このような発言をされたら、窓口担当者に対して失望し、
これ以上、頼ろうとはしないでしょう。
「相談者の辛い気持ちに寄り添うこと=信頼関係の構築」に繋がります。
相談者が、安心して話しができる環境をつくる為にも
●ハラスメント行為者を擁護する
●相談者を責める
この行為は、絶対に辞めましょう。
(6)行為者、第三者に対して、ヒアリングを行ってよいか確認する
ハラスメント行為者や第三者にヒアリングをおこなう際は、
「ヒアリングを実施していいか」事前に、相談者に同意を得るようにしましょう。
相談者が、「行為者・第三者へのヒアリング」を拒む場合は、
対応には限界があり、会社が出来る事としては、
●行為者の観察
●一般的な再発防止策
になる旨を説明します。
また、相談者との面談を続け、状況を見計らって、
ヒアリングをおこなうことの重要性を再度説明し、
相談者の同意を得るよう努めましょう。
相談者は、ハラスメント行為者からの「報復」を恐れています。
●相談者を守る
●相談したことで、相談者が不利益を被ることはない
●行為者が報復をしないよう徹底する
これらを伝えることは勿論ですが、
相談窓口担当者に対して、「この人なら信頼できる」と、
日頃から、相談者に思って貰うことが大切です。
「相談者」と「窓口担当者」との信頼関係が築けていれば、
「被害者」や「第三者」へのヒアリングを受け入れて貰いやすくなります。
(7)今後の流れを説明する
今後の流れが分かると、相談者は安心します。
今後、問題の解決に向けて、「何を、どのような手順で進めていくのか」を
スケジュールも含めて、相談者に説明してあげることが大切です。
(8)言い残したことがないか尋ねる
面談時間は、原則1時間です。
残り5分になったら、「言い残したことはないですか」と尋ねましょう。
では、なぜこの質問をする必要があるのでしょうか。
皆さんも一緒に考えてみましょう。
【A】相談者に、「話したいことを話せずに終わってしまった」という印象を与えない為
【B】相談者が、「話そうかどうか」躊躇していた内容が、残り5分で出てくることがある為
答えは、【B】です。
残り5分で「言い残したことはないですか」と質問をすると、
「重大な話」や「相談者の本音」がでてくる場合があります。
筆者も、実際に下記のような場面に遭遇したことがあります。
上司からのハラスメント被害を冷静な面持ちで語ってくれていた相談者が、
残りの5分で
●上司とは、最初はいい関係を築けていたのに、いつから関係が悪化してしまったのだろう
●今回上司を訴えるような事になって、本当に悲しい
と涙を流しながら、本音を吐露してくれたのです。
人間の感情は、決して一つではありません。
様々な感情が、入り混ざっています。
だからこそ、相談窓口担当者は、ラスト5分も気を抜かずに、
相談者に真摯に歩み寄ることが大切です。
ハラスメント行為者へのヒアリング
(1)はじめから加害者扱いしない
ハラスメントの行為者とされる方も、大切な従業員の一人です。
最初から犯人扱いをしたり、語気を荒げたりすることなく、
事実をしっかりと聴きとることが大切です。
では、皆さんに質問です。
次のうち、相談窓口担当者が、「行為者を最初から犯人扱いしている」のは、
どちらでしょうか。
【A】なんで呼ばれたか、理由はお分かりですよね。
あなたの暴言は、社内で有名ですよ。
あなたの暴言が原因で、何人もの部下が、退職したそうじゃないですか!!
【B】今回、部下の方から、〇〇課長の暴言で、
「職場環境が悪化している」という申し出がありました。
双方から、お話を伺いたいと思っておりますので、ご協力の程お願いします。
最初から行為者を「犯人扱い」しているのは、【A】です。
ハラスメント行為者とされる方の「言い分」を聴く前に、
安易に「犯人」と決めつけてはいけません。
相談窓口担当者がすべき事は、事実確認です。
ハラスメントの行為者とされる方にも、「人権」があることを忘れずに、
冷静に話を聴くようにしましょう。
話を聴く際には
●相談者が主張している「行為者の言動」はあったのか
●どのような認識で、その言動をおこなったのか(=行為者とされる方の言い分)
この2点に留意をして、話を聴くと良いでしょう。
(2)行為者の全人格を否定しない
「罪を憎んで、人を憎まず」という言葉があるように、
反省して貰うべきことは、ハラスメントの行為そのものです。
ハラスメントの行為者だからといって、
その方を全否定したり、人格を傷つけるような発言をしてはいけません。
相談窓口担当者は、人事部やコンプライアンス部等とも連携し、
二度とハラスメントが起こらないよう
行為者に「問題行動の改善」を促していくことが大切です。
(3)被害者に報復しないよう約束させる
被害者が相談したことで、不利益を被ってはいけません。
行為者が、被害者に対して、
「報復」や更なる「嫌がらせ」をしないよう、
その場で、約束をさせる事が大切です。
では、その時の言い回しとして適切なのは、次のうちどちらでしょうか。
【A】被害を訴えている部下に、嫌がらせや報復をおこなうと、
それ自体が重いパワハラにあたりますので、ご協力の程お願いいたします。
ご理解いただけますか。
【B】被害を訴えている部下に、嫌がらせや報復をすることは、
「あなたがパワハラをしている」と認めたことになりますよ!!
いいですね!!絶対にやらないでください。
被害者に対して、報復をしないよう促す言い回しとして適切なのは、【A】です。
【A】のように
●「報復=ハラスメントに該当する」という事実を伝える
●「協力をお願いします」といった言い方をする
といいでしょう。
【B】の言い方だと、
「相談窓口担当者から脅された」と行為者から訴えられてしまうリスクがあるので、
対応としては、好ましくありません。
第三者へのヒアリング
(1)【情報漏洩 防止!】第三者へのヒアリングは、出来る限り人数を絞っておこなう
通常は、「相談者」と「行為者」に事実確認をおこない、
意見が一致しない場合は、
第三者(同席者、目撃者、同様のハラスメントを受けている者)に事実確認をおこないます。
ただし、緊急性が高い場合や、証拠隠滅の恐れがある場合は、
「行為者」の前に、「第三者」から話を聴くこともあります。
第三者に話を聴くことで、外部に情報が漏れやすくなるので
事実確認を行う「第三者」の人数は、出来る限り人数を絞っておこなうと良いでしょう。
(2)守秘義務の徹底をお願いする
第三者にヒアリングをした場合には、「守秘義務」の徹底をお願いしましょう。
行為者に、第三者からヒアリングを行った事実が伝わると、
気分を害したり、
相談者や第三者に対して、報復をする恐れがあります。
新たなハラスメントを生まない為にも、
第三者に、守秘を厳守してもらうことが大切です。
まとめ
以上、今日は、ハラスメントの相談窓口担当者が、
●相談者(ハラスメント被害者)
●ハラスメント行為者
●第三者に対して、
どのような事に心がけて話を聴いたらいいのか、ポイントを19個紹介しました。
相談窓口担当者の心構え
(1)話しやすい雰囲気をつくる【信頼関係の構築がポイント!】
(2)「決めつけ」や「偏見」、自分の「価値観」・「意見」の押し付けをしない
事前説明
(1)守秘義務の説明
(2)複数名で相談に応じていくこと
(3)相談の内容を記録に残すこと
(4)1回の相談時間は、長くても1時間
被害者へのヒアリング
(1)「困っている事」や「要望」を確認する
①暴言の内容を確認する
②感情に寄り添う
③「目撃者」や「証拠」があるか確認する
(2)体調を確認する
(3)過重労働の有無を確認する
(4)確認しながら聴く
(5)相談者を責めない
(6)行為者、第三者に対して、ヒアリングを行ってよいか確認する
(7)今後の流れを説明する
(8)言い残したことがないか尋ねる
ハラスメント行為者へのヒアリング
(1)はじめから加害者扱いしない
(2)行為者の全人格を否定しない
(3)被害者に報復しないよう約束させる
第三者へのヒアリング
(1)【情報漏洩 防止!】第三者へのヒアリングは、出来る限り人数を絞っておこなう
(2)守秘義務の徹底をお願いする
従業員が安心して相談できる環境をつくるには、
相談窓口担当者の「傾聴力」「問題に向き合う真摯な姿勢」が重要です。
相談者から
●話をしたら、気持ちが楽になった
●話を聴いて貰えて良かった
などの言葉がでてくれば、初動として十分に効果があったと言えます。
相手の反応を見ながら、
●話を聴く上で、何が上手くいっているのか
●何をもっと改善したらいいのかを
常に振り返りをしながら、進めていくことが大切です。
対人支援において、「これが正解!」という確固たるマニュアルはありませんが、
今日紹介したポイントのうち、どれか一つでも実践して頂けたら嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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